家賃は「何も買っていない」わけではない

家賃で買っているのは家そのものではありません。その場所に住める権利と、引っ越せる自由です。

賃貸なら、転職・結婚・同棲・出産・転勤・近隣トラブルなどで環境が変わったとき、比較的動きやすい特徴があります。20代は生活が変わりやすい時期なので、この柔軟性にも価値があります。

持ち家も「住宅ローン=全部資産」ではない

住宅ローンの返済には元本と利息があります。元本返済は住宅という資産へ置き換わりますが、利息は金融機関への支払いです。

さらに持ち家には、

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災・地震保険
  • 修繕(マンションなら管理費・修繕積立金)
  • 購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用・ローン手数料など)
  • 売却時の諸費用(仲介手数料など)

があります。つまり「家賃9万円 vs ローン返済8万円」だけでは比較できません。

数字で比べる:買って5年で売った場合

ここからは仕組みを理解するための仮定の試算です。実際の相場や金利を示すものではありません。

前提

項目 賃貸 購入(中古マンション)
物件 家賃9万円 価格2,800万円
毎月の支払い 家賃9万円+更新料(2年ごとに1か月分を月割り) ローン返済(金利0.8%・35年・全額借入)約7.6万円+管理費・修繕積立金2.5万円+固定資産税等(月割り)1万円
初期費用 考慮しない 購入諸費用 約196万円(物件価格の7%と仮定)
5年後 引っ越す 売却(仲介手数料を差し引き、ローン残高を一括返済)

毎月の住居費

  • 賃貸:約9.4万円
  • 購入:約11.1万円

5年間の実質的な負担(支払った総額 − 売却して手元に戻った額)

5年後の売却価格 購入の実質負担 賃貸の支払総額 差
2,600万円(1割弱下落) 約803万円 約563万円 賃貸が約240万円少ない
2,800万円(買値と同じ) 約610万円 約563万円 賃貸が約47万円少ない
3,000万円(値上がり) 約417万円 約563万円 購入が約146万円少ない

※5年後のローン残高約2,446万円、売却時の仲介手数料(3%+6万円+消費税)で計算。住宅ローン控除、金利の変動、リフォーム費用、引っ越し費用は含めていません。

この例では、5年で売るなら、買値以上で売れない限り賃貸の方が負担が小さいという結果になりました。購入の初期費用と売却費用が、短期間では重くのしかかるためです。反対に、長く住むほど初期費用の負担は薄まり、元本の返済も進みます。

家は「買った価格」より「売れる価格」

5,000万円で買った家が、10年後も5,000万円で売れるとは限りません。反対に価格が上がる場合もあります。

重要なのは、購入価格ではなく、必要なときにいくらで売れるか(または貸せるか)です。

  • 駅からの距離、周辺の需要
  • 建物の築年数、管理状態(修繕積立金が不足していないか)
  • 同じマンション・近所の過去の成約価格

資産価値は住宅ごとに違います。

住宅ローン金利もずっと同じとは限らない

国土交通省の調査によると、近年の住宅ローン利用では変動金利型が大きな割合を占めています。一方、金利環境は変化しています。

上の例で、金利が0.8%から2.0%に上がった場合、毎月の返済は約7.6万円から約9.3万円に増えます(35年間その金利が続いたと仮定した単純計算)。変動金利を選ぶ場合は、「今の返済額なら払える」だけでなく、金利が上がった場合にも家計が耐えられるかを確認する必要があります。

看護師ならではの論点

1. 住宅手当・寮・借り上げ社宅

病院によっては、住宅手当が賃貸住宅の人だけに支給される、寮や借り上げ社宅で家賃負担が小さい、といった制度があります。家を買うと、これらがなくなる場合があります。

住宅手当が月2万円なら、5年で120万円。比較するときは、購入後の手当の有無を就業規則で確認しておきましょう。

2. 勤務地を変えられる価値

看護師は、病院・クリニック・訪問看護・介護施設など働く場所の選択肢が多く、転職で通勤先が大きく変わることもあります。家を買うと、その家から通える範囲で仕事を探すことになりやすく、持ち家は将来の働く場所にも影響します。

3. 夜勤明けの通勤と、昼に眠れる環境

夜勤がある人は、

  • 夜勤明けに無理なく帰れる通勤時間・手段か(車通勤が可能か)
  • 日中に眠れる静かさ・遮光ができるか

も住まい選びの条件になります。賃貸なら住んでみて合わなければ引っ越せますが、購入後は変えにくくなります。

4. ローン審査と働き方の変化

住宅ローンの審査では、年収・勤続年数・雇用形態が見られます。転職直後や非常勤への切り替え後は、借りにくくなることがあります。反対に、借りた後に夜勤を減らす・産休育休に入ると、返済額はそのままで収入だけが下がります。

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どちらが得かではなく「何年住むか」

賃貸と購入を考えるとき、「月額はいくら?」より先に、その家に何年住む可能性があるかを考えてみましょう。

住む見込み 考え方
5年未満 購入の諸費用と売却費用が重く、賃貸が有利になりやすい
5〜10年 売却価格次第。売れる価格・貸せる家賃の見通しが鍵
10年以上 購入のメリットが出やすいが、修繕費と金利上昇への備えが必要

購入前に考えたい5つ

  1. 5〜10年後もこの地域に住みたいか:通いたい病院・施設がこの地域に複数あるか
  2. 転職の可能性はあるか:家から通える範囲の求人を一度調べてみる
  3. 結婚・子どもなどで必要な広さは変わらないか:1LDKで足りるのは何年か
  4. 購入後も現金を残せるか:頭金を入れすぎず、生活費の3〜6か月分は手元に
  5. 売る・貸す場合の出口を考えているか:同じ建物の成約価格と賃料を調べておく

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Nurse Life+の結論

「家賃は捨て金」は半分しか説明していません。

賃貸は、自由に動けることにお金を払う。 持ち家は、住居を資産として持つ代わりに、長期的な責任を引き受ける。

とも言えます。20代なら「今払っている家賃がもったいない」ではなく、10年後にどんな暮らしと働き方をしていたいかから考える方が後悔しにくいでしょう。