「属性がいい」は正式な制度用語ではない
「属性がいい」は法律上の言葉でも、金融機関共通の正式な判定基準でもありません。
ただし、融資では申込者の返済能力が確認されます。国土交通省の民間住宅ローン調査では、多くの金融機関が審査項目として、
- 年収
- 勤続年数
- 返済負担率
- 雇用形態
- 業種
- 担保評価
- 他の債務や返済履歴
などを挙げています。これは住宅ローンの調査ですが、「長期間返済できるかを見る」という考え方を理解する参考になります。
投資用ローンでも、実際の商品条件を見ると、勤続年数や年収を条件にしているものがあります。
| 商品の例 | 主な利用条件(抜粋) |
|---|---|
| オリックス銀行 不動産投資ローン | 原則として同一勤務先3年以上、前年度税込年収500万円以上、返済期間中に安定収入が見込めること など |
| イオン銀行 投資用マンションローン | 給与所得者は勤続3年以上、前年度税込年収400万円以上 など |
※2026年9月時点で確認できた条件の抜粋です。最新の条件は各行の商品説明書で確認してください。
では、なぜ医師や看護師が営業先になりやすいのか
「医療職を狙った営業件数」の公的統計があるわけではないため、ここからは融資条件から考えられる理由です。
医師や看護師は、資格職で、病院などに雇用され、一定の収入を継続して得ている人が多い職種です。つまり営業会社から見ると、
ローン審査の土俵に乗りやすそうな人を探す ↓ 安定収入・勤続年数・勤務先が説明しやすい人を探す ↓ 医療職が営業対象になりやすい
という構造は十分考えられます。不動産会社にとって重要なのは、物件を紹介できる人ではなく、最終的に融資を利用して購入できる可能性がある人だからです。
看護師に電話が増えやすいタイミング
上の条件を見ると、「勤続3年」「年収400万〜500万円」が一つの目安になっている商品があります。看護師の場合、
- 新卒から3〜4年目で勤続年数の条件を満たし始める
- 夜勤手当込みで年収400万〜500万円台に届く人が多い
という時期が重なります。「3年目くらいから急に電話が増えた」と感じる人がいるのは、このためかもしれません(推測であり、統計ではありません)。
「融資が通る」と「買った方がいい」は完全に別
ここが一番重要です。
2,500万円を借りられる人だからといって、2,500万円の物件を買うべきとは限りません。
- 金融機関が主に確認するのは「貸したお金を返せそうか」
- 投資家が考えるべきなのは「その物件を買った結果、自分のお金がどうなるか」
似ていますが、別の問題です。
計算例:年収480万円の看護師が2,500万円を借りたら
金利2.0%・35年・元利均等返済と仮定すると、毎月の返済は約8.3万円、年間約99万円です。
- 返済負担率(年間返済額÷年収):約21%
金融機関の審査では、家賃収入の見込みも考慮されるため、この数字だけで可否は決まりません。ただ、自分の手取りから見ると、家賃が入らない月は毎月8.3万円を給与から払うことになります。夜勤を減らす、産休・育休に入る、非常勤になるといった変化があっても、返済額は変わりません。
実際の月々の収支(管理費・税金・空室を含む)は、看護師が不動産投資を考える前にで表にして確認できます。
営業トークを2つに分けて聞く
営業を受けたら、話を次の2つに分けると整理しやすくなります。
あなたの話
- 看護師だから融資を受けやすい
- 年収が安定している
- 勤続年数が長い
- 信用力がある
物件の話
- 購入価格はいくらか
- 家賃はいくらか
- 管理費・修繕費はいくらか
- 空室になったらどうなるか
- 金利が上がったらどうなるか
- 10年後にいくらで売れそうか
前者がどれほど魅力的でも、後者が悪ければ投資としては成立しません。
よくある営業トークの読み替え
| 営業トーク | 読み替え | 聞き返したいこと |
|---|---|---|
| 「看護師さんは属性がいい」 | 融資の審査に通りやすい可能性がある | 物件そのものの収支は? |
| 「月々1万円の負担で持てます」 | 毎月赤字が出る | 管理費の値上げ・空室・金利上昇後は? |
| 「生命保険代わりになります」 | 団信でローン残高が消える | 今入っている保険と重複しないか? |
| 「年金代わりになります」 | 完済後の家賃を当てにしている | 35年後の家賃と修繕費の想定は? |
| 「節税になります」 | 不動産所得の赤字を給与と損益通算 | 税引き後で、手元のお金は増えるのか? |
| 「今だけの物件です」 | 決断を急がせている | 持ち帰って比べてもいいか? |
「節税できます」も一度分解する
減価償却などによって税務上の損益が変わり、所得税・住民税が戻るケースはあります。
しかし、税金が減ることと、現金が増えることは同じではありません。たとえば毎月2万円の実際の赤字(年24万円)を出して、税金が年5万円戻っても、手元のお金は年19万円減っています。
税金を減らすために、もっと大きな経済的損失を出していては意味がありません。物件価格・家賃・ローン・修繕・売却価格まで含めて考える必要があります。
断り方と、困ったときの相談先
- 職場への電話:「業務中なので対応できません。今後の連絡も不要です」と伝えて切る
- 会う約束をしてしまった:その場で契約せず、「資料を持ち帰って家族と相談します」で終える
- しつこい勧誘が続く:宅地建物取引業法では、相手が断った後も勧誘を続けることなどが禁止されています。免許を出している国土交通省・都道府県の窓口や、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談できます
Nurse Life+の結論
医師や看護師に不動産会社が近づく理由を一言で表すなら、
「その職業だから投資が有利」ではなく、「融資を使える顧客になりやすいと見られやすい」
という方が近いでしょう。
営業を受けること自体が問題なのではありません。ただし、
借りられる金額 と 借りるべき金額
は分けて考える。ここだけは覚えておきたいポイントです。
参考資料
- 国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(参照日:2026-09-29)
- オリックス銀行 manabu不動産投資「20代が不動産投資をはじめるとぶつかりやすい障壁とその対策」(商品説明書の引用)(参照日:2026-09-29)
- イオン銀行「投資用マンションローン商品概要説明書」(参照日:2026-09-29)
- 国土交通省「悪質な勧誘行為への注意喚起」(参照日:2026-09-30)
