不動産投資の基本的な仕組み
物件を買う → 入居者に貸す → 家賃を受け取る
これが基本の流れです。ローンで買う場合、受け取った家賃から次の支払いをします。
| 支出 | 内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| ローン返済 | 元本+利息 | 毎月 |
| 管理費・修繕積立金 | マンションの共用部分の管理、将来の大規模修繕 | 毎月(値上がりすることがある) |
| 賃貸管理手数料 | 入居者対応・家賃回収を管理会社に任せる費用 | 毎月(家賃の数%程度が多い) |
| 固定資産税・都市計画税 | 所有者にかかる税金 | 年1回(4期に分けて払うことも) |
| 保険料 | 火災保険など | 年1回など |
| 室内の修繕・原状回復 | 退去時のクロス張り替え、給湯器・エアコン交換など | 不定期 |
つまり、家賃=そのまま利益ではありません。
数字で見る:ワンルーム投資の収支例
ここからは、仕組みを理解するための仮定の試算です。実在の物件や相場を示すものではありません。
前提
- 物件価格:2,500万円(諸費用は自己資金で支払い、物件価格は全額ローン)
- ローン:金利2.0%(全期間一定と仮定)、35年、元利均等返済
- 家賃:月8.5万円
- 管理費・修繕積立金:月1.2万円
- 賃貸管理手数料:家賃の5%
- 固定資産税等:年8万円、保険料:月1,500円相当
毎月の収支
| 項目 | 金額(月) |
|---|---|
| 家賃収入 | +85,000円 |
| ローン返済 | −82,816円 |
| 管理費・修繕積立金 | −12,000円 |
| 賃貸管理手数料 | −4,250円 |
| 固定資産税等(月割) | −6,667円 |
| 保険料 | −1,500円 |
| 手元に残る額 | −22,233円 |
この例では、満室でも毎月約2.2万円、年間約27万円を給与から補うことになります。営業資料では「ローン返済と家賃がほぼ同じ」と説明されることがありますが、管理費や税金まで入れると印象が変わることがあります。
※住民税・所得税への影響(減価償却など)は含めていません。税の話は後で扱います。
空室・金利上昇・家賃下落を入れると
同じ例で、条件が変わった場合です。
| シナリオ | 月の手元残高 | 年間 |
|---|---|---|
| 基本(満室・金利2.0%) | 約−2.2万円 | 約−27万円 |
| 金利が3.0%に上がった | 約−3.6万円 | 約−43万円 |
| 金利が3.5%に上がった | 約−4.3万円 | 約−51万円 |
| 家賃が1割下がった(7.65万円) | 約−3.0万円 | 約−36万円 |
| 基本+3か月空室 | — | 約−27万円に加えて家賃25.5万円の減少 |
※金利上昇のケースは、単純化のため残り35年すべてその金利で返済した場合の概算。実際の変動金利では返済額の見直しルール(5年ルール・125%ルールなど)がある商品もあります。
空室の間も、ローン・管理費・税金の支払いは止まりません。入居者が入れ替わるときは、原状回復費や募集の広告料がかかることもあります。
売るときに「残っている借金」と比べる
不動産投資の結果は、売ったときに確定します。
上の例で10年後に売る場合、ローンの残高は約1,954万円です。売却時には仲介手数料などの費用もかかるため、少なくとも残高+売却費用を上回る価格で売れないと、借金が残ることになります。
- 2,500万円で買った物件が、10年後にいくらで売れるかは誰にも分からない
- 新築は購入直後に価格が下がりやすいと言われる
- 築年数が進むと、買い手が使えるローンの条件が厳しくなることがある
「毎月の赤字は2万円だけど、最後に売れば取り戻せる」という説明を受けたら、いくらで売れる前提なのかを必ず聞いてください。
「節税になる」はどう考える?
不動産所得が赤字になると、給与所得と損益通算できる場合があります。その結果、所得税・住民税が戻ることがあります。
ただし、
- 赤字の中心が「実際にお金が出ていく赤字」なら、税金が数万円戻っても手元のお金は減っている
- 減価償却で帳簿上の赤字が出ても、年数がたつと償却できる額は減っていく
- 売却時に利益が出れば、譲渡所得として課税される
税金が減ることと、お金が増えることは別です。税引き後で見て、投資全体として手元のお金が増えるかで判断します。
看護師が特に気をつけたい点
1. 勤務先を変えにくくなることはないか
投資用ローンの返済は、給与からの補填を前提に続けることになります。夜勤を減らす、非常勤になる、産休・育休に入るなどで収入が下がったときも、ローン返済は変わりません。
2. 住宅ローンを組む予定との関係
投資用ローンの借入があると、将来自分の家を買うときに借りられる額が減る可能性があります。
3. 「住宅ローンで投資物件を買いましょう」は断る
自分が住む家のための住宅ローンで投資用物件を買うことは、金融機関との契約違反にあたり、一括返済を求められるおそれがあります。
4. 職場で声をかけられたとき
病院への電話、休憩室での勧誘、SNSや婚活アプリで知り合った人からの投資話もあります。その場で返事をせず、「資料をもらって持ち帰ります」で十分です。
関連記事:「家賃は捨て金だから家を買う」は本当?
契約前に確認したい項目
数字の確認
- 物件価格と、同じエリア・築年数の中古相場
- 自己資金・借入額・金利(固定か変動か)・返済期間
- 毎月の手元残高(上の表と同じ形で書いてもらう)
- 管理費・修繕積立金の今後の値上げ予定(長期修繕計画)
- 空室期間・家賃下落を入れた収支
- 10年後・20年後の売却想定価格と、その根拠
業者の確認
- 宅地建物取引業の免許番号(国土交通省・都道府県のサイトで確認できる)
- サブリース(家賃保証)の場合、保証家賃の見直し条件と解約条件
契約してしまった場合
宅地建物取引業者が売主で、喫茶店や自宅など事務所以外の場所で申し込み・契約をした場合は、クーリング・オフについて書面で告げられた日から8日以内なら、書面の発信により解除できる場合があります。ただし買主が自宅・勤務先での説明を申し出た場合や、物件の引渡しを受け代金全額を支払った場合などは対象外です。困ったときは、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。
Nurse Life+の結論
不動産投資は、
家賃収入 − ローン − 管理費 − 税金 − 修繕 − 空室 + 売却価格 − 残債 − 売却費用
まで入れて、はじめて損得が見える投資です。
「看護師だからローンが通る」ことと、「その物件が良い投資である」ことは別の話です。数字を全部並べてみて、それでも納得できるかどうか。判断はそこからで遅くありません。
参考資料
- 国土交通省「小口化不動産への投資をかたった詐欺的勧誘等に係る注意喚起」(参照日:2026-09-28)
- 国土交通省「住宅ローンの金利リスクの普及啓発について」(参照日:2026-09-28)
- 国土交通省「宅地建物取引業者の検索」(参照日:2026-09-30)
-
国土交通省「悪質な勧誘行為への注意喚起」(参照日:2026-09-30)
-
東京都「不動産取引の手引き:契約を解除するときは」(参照日:2026-09-30)
