昔から「預金は増えない」わけではない
今の感覚だけで30〜40年前を見ると判断を誤ります。
日本銀行のデータを見ると、1990年前後には政策金利に関係する基準金利が現在よりかなり高い時期がありました。その後、長い低金利時代に普通預金金利は非常に低い水準が続きました。
さらにその後は金利が上昇し、2026年9月の金融機関の普通預金の平均店頭表示金利は年0.322%まで上がっています。
つまり、「預金はいつの時代もほぼ0%だった」わけではありません。お金の常識は、金利環境によって変わります。
投資も「いつでも勝っていた」わけではない
投資信託についても同じです。
金融庁には、1985年以降の各年から国内外の株式・債券へ毎月積立・分散投資した場合の過去データがあります。その資料では、
- 保有期間5年では元本割れしたケースがあった
- 20年間保有したケースでは、過去のサンプルで運用成果がプラスの範囲に収まっていた
とされています。ただし、これは過去の実績です。「20年持てば必ずプラスになる」という保証ではありません。
毎月3万円を20年間積み立てたら?
ここからは実績ではなく、単純なシミュレーションです。
| 想定 | 20年後の概算 | 積立元本との差 |
|---|---|---|
| 運用なし(現金) | 720万円 | 0円 |
| 預金金利 年0.3%が続いた場合 | 約742万円 | 約+22万円 |
| 年3%で運用できた場合 | 約985万円 | 約+265万円 |
| 年5%で運用できた場合 | 約1,233万円 | 約+513万円 |
※毎月末積立、月次複利で単純計算。手数料・税金等を考慮していません。 ※年0.3%・3%・5%は仮定であり、将来の成果を保証しません。
数字だけ見ると投資が有利です。さらに、年5%のケースで利益約513万円をNISA以外の口座で得ていた場合、利益に約20%の税金がかかり、差し引きで約104万円少なくなります。投資をするなら非課税制度を使うかどうかでも結果が変わります(NISAの仕組みはNISAとiDeCoの違いで整理しています)。
途中で相場が下がったら?
表の数字は「毎年同じ利回りで増え続けた」という仮定です。実際には途中で大きく上下します。
例:年5%で15年間積み立てた後、相場が30%下がった場合(仮定)
- 15年間の積立元本:540万円
- 下落前の評価額:約802万円
- 30%下落後:約561万円
積み立てた金額はまだ上回っていますが、画面上では約240万円が一度に減ったように見えます。
このとき、
- 積立をやめずに続けられるか
- この時期にお金が必要にならないか
が、実際の成果を大きく左右します。ここが「机上の計算」と「現実」の違いです。
重要なのは「投資信託か貯金か」ではなく時間
例えば、3年後に引っ越すための100万円。これを投資信託へ入れると、3年後に市場が下がっていれば、必要なタイミングで損失を確定することになります。
一方、30年後のためのお金なら、短期の値動きを受け入れながら長期で運用する考え方ができます。
看護師のお金を「使う時期」で分けた例
| 使う時期 | お金の例 | 置き場所の考え方 |
|---|---|---|
| いつでも | 生活防衛資金(生活費の3〜6か月分) | 預貯金 |
| 1〜3年以内 | 引っ越し、車、転職の間の生活費、認定看護師の研修費 | 預貯金 |
| 5〜10年後 | 住宅の頭金、結婚・出産、進学 | 預貯金と投資を組み合わせる |
| 20年以上先 | 老後の生活費 | 投資の比重を高めやすい |
看護師は、転職や進学、産休・育休などで「思ったより早くお金が必要になる」こともあります。使う時期が読めないお金は、投資に回す割合を控えめにしておくと安心です。
貯金にはリターン以外の価値がある
現金には、
- 金額が大きく変動しにくい
- すぐ使える
- 下落を気にしなくてよい
という特徴があります。
たとえば職場がつらいとき、貯金があれば「一度休む」「転職先をじっくり選ぶ」という選択ができます。生活防衛資金まで投資して、相場が下がったときに取り崩すのでは本末転倒です。
関連記事:「辞めたい」の奥にある、私の気持ち。
反論:「インフレなら現金は目減りするのでは?」
物価が上がると、同じ金額の現金で買えるものは減ります。その意味で、長期間すべてを現金で持つことにはリスクがあります。
ただ、それは「長期で使わないお金」の話です。数年以内に使うお金まで投資に回す理由にはなりません。インフレへの備えは長期のお金で、使う予定のあるお金は現金で、と分けて考えると整理できます。
Nurse Life+の結論
「貯金より投資信託がいい」という言い方は半分正しく、半分雑です。
長期の余裕資金なら、投資は資産形成の有力な方法です。一方、
お金には「増やす」以外に「いつでも使える状態で置いておく」という役割があります。
投資信託と貯金はライバルではなく、使う時期によって役割を分けるもの。これが過去データを見たときの、いちばん現実的な結論だと考えます。
参考資料
- 金融庁「資産形成の基本」(参照日:2026-09-29)
- 金融庁「長期投資の効果について学ぼう!」(参照日:2026-09-29)
- 日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」(参照日:2026-09-29)
- 日本銀行「基準割引率および基準貸付利率の推移」(参照日:2026-09-29)
- 総務省統計局「消費者物価指数」(参照日:2026-09-30)
